この秋演奏するグラナドスの組曲ゴイエスカス(演奏会では一部抜粋)は、カタルーニャ生まれのグラナドスの最高傑作と言われる名作です。ゴヤ風(goyescas)というタイトルの所以は、スペインの天才画家Goyaの絵画シリーズ「恋する若者たち」の雰囲気を音楽で表したものだからだそうです。
華やかな宮廷画家であったGoya。当時宮廷では、若者スタイル(マホ、マハ)が流行していて、そんな衣装に身を包んだ貴族たちの恋愛模様はこんな風だったのかしら、と我々の想像力をかきたてます。
スペインにはディズニーのシンデレラ城のモデルになったと言われるお城から、アラブ風の要塞城まで、たくさんの素敵なお城があります。今日はローマ時代の水道橋で有名なセゴビアという街にある、ラ・グランハ・デ・サン・イルデフォンソ宮殿をご紹介します。
フェリペ5世によって建てられた広大な美しい宮殿と庭園です。行った日は雨が降っていましたがそれもまた風情があってとても素敵です。ここでどんな素敵な恋物語があったのかな、と思うとなんだか嬉しいですね。コンサートではそんな雰囲気を味わっていただきたいと思います。




9、10月のプログラムでは、ファリャの若い時代の代表曲、ノクターンとうたを最初に演奏します。初期の作品というのに、まるでショパンの最晩年の悲しみを偲ばせる不思議な美しさ、淡白さが、胸を打ちます。こういうスペインの叙情もぜひご紹介したいと思い選曲しました。
ファリャは若い時に生家の没落(スペインの国としての衰退の煽りを受けたというべきか)により非常な苦労をしたそうです。初恋もそれが原因で破れ、以来恋愛は伝えられていません。内面の夢や官能を、音楽の中にだけ求めた人生だったのかもしれません。
ベッケルも死と私生活の不幸に覆われた人生でした。ベッケルの75番の詩にファリャが作曲した歌曲は:
「まだ見開かれたままのその目を
閉じてやった、
その顔を
白い布で覆った、
そしてある者たちはすすり泣きながら、
他の者たちは押し黙り、
悲しい寝室から
一同は外へ出た。・・・・」(引用:ベッケル詩集 翻訳 山田眞史)
その前の74番の詩も一度読んだら忘れられない。
「・・・・
夜となり、そして忘却の両腕のなかへと
僕はその奥深い懐の中へ石のように落ちていった。
眠り、そしてめざめた時、僕は声を震わせた。「誰か
僕が愛した人が死んでしまったのだ!」 (引用同上)
日本の皆様に、スペインが誇る20世紀の大作曲家マヌエル・デ・ファリャ(1876-1946)の人生、作品、演奏会の情報など発信するため、日本ファリャの友の会を誕生させました。遺族で、ファリャ資料財団の会長のエレナ・ガルシアデパレーデス・ファリャ氏が命名してくださいました。こちらからどうぞ
「セビーリャの産んだ二人の天才」について皆さんご存知ですか。一人は画家の中の画家と呼ばれるベラスケス。もう一人は詩人のベッケルです。
セルバンテス(ドンキホーテ)に次ぐ不動の第二位の人気を誇ります。愛、絶望、孤独、死について歌う彼の作品は、読むものの心に寄り添います。個人的には、愛がテーマの詩はちょっと気恥ずかしいけれど、孤独や死の歌は何度読んでも深い感動に包んでくれて大好きです。
スペイン語のもつ、パッションと厳かさ、暖かさ、鋭さに心を奪われます。南米まで続くスペイン語文学の始祖たちはスペインの豊かな古典なんですね。
スペインの都市の中でもとりわけスノッブな街セビーリャの豊かな家庭に生まれ、早くに両親を亡くし、病気など苦労が絶え間なかった人生だったようです。首都マドリードに出て上流のサロンに出入りしてこれからもっと活躍するであろう時に、若くして亡くなりました。
シューベルトのように(外見も個性もだいぶ違ったようですが)友人達に愛されたようで、亡くなってすぐに彼らによって詩集が出版され、今もベッケルに関する書籍は大変多いのです。
その詩は後に、ファリャやアルベニス、モンポウなどスペインの作曲家たちが音楽をつけて、美しい歌曲になっています。ベッケル自身も音楽を愛し、ピアノ演奏を快くしたそうです。兄ベッケルの絵を見ながら詩を読むと、当時の雰囲気や彼らの情熱が、走馬灯のように花開きます(そんな表現は日本語としてまちがっているかもしれません!)
9月と10月の演奏会では、そんなロマンチックなスペインの情緒を味わっていただける曲を演奏します。ファリャの「ノクターン」、そして「うた」です!どうぞお楽しみに。
来シーズンの演奏会ではスペインバスク地方に生まれた作曲家グリーディ、フランスバスク地方に生まれた作曲家ラヴェルの曲も聞いていただく予定です。ラヴェルはあの有名な「亡き王女のためのパヴァーヌ」を演奏します。
有名な曲をきちんと演奏するのは難しいものです。耳の先入観を追放するのは大変です。その上この曲は特に、「おしゃれで機知に富んだフランス人ラヴェル」というコマーシャルマーケティングの印象が強すぎませんか?カリカチュア感が。。。
ずっと避けていたこの曲をなぜ聞いて欲しいと思ったか。
彼の生地サンジャンドリューズ(スペインと国境の街)を訪れて、「ラヴェルの音楽の率直で自然な美しさ!」に閃いたのです。そしてスペイン側バスク出身のグリーディの作品と合わせて聞いてもらうことによって、二人のバスク人に共通する空気感が、より確かな答えとなると思うのです。
亡き王女のためのパヴァーヌ。題名にはほとんど意味がない、音の響きでタイトルをつけたそうです。センスが良いなあ。で、ご存知でしたか?太陽王ルイ14世が花嫁となるスペイン王女を待ち、豪華な結婚式を挙げたのは、他でもないここ、サンジャンドリューズの美しい教会であったこと。
教会内部はまるで木製の大きな船のよう。不思議な、この世のものとは思えない美しさとあたたかさで満ちていました。大西洋に面していて、街のどこにいても、なだらかな緑の丘の上にいても、どんな時も湿気と匂いで、海の存在がある街であったこと。若々しい歌、中世やスペインへの憧れ。そんな雰囲気を感じる演奏をしたいと思います。
本日発売開始 西澤安澄スペインピアノリサイタル(東京)
日時:9月24日(土)13時半開演
原宿駅徒歩2分 木肌とベーゼンドルファーの響きのアコスタディオにて、オールスペインのピアノリサイタル開催。限定60名。
西澤安澄が原点に帰り、スペインの音楽と真剣勝負を繰り広げます。
バスク、カタルーニャ、カスティーリャ、アンダルシア。さまざまな地方の魅力を音楽で味わってください。懐かしいあの曲から、知られざる作品まで。きっと、今まで知らなかった新たなスペインの魅力の虜になることでしょう。トーク付きコンサート。休憩あり。終演予定15時半頃。
問い合わせ 予約は
▶︎カンフェティ チケットセンター
web予約 https://www.confetti-web.com/azuminishizawa2
電話予約 0120-240-540 通話料無料・受付時間平日10時~18時
「20世紀前半、この世界の激動機に、いかにバルトークが戦争やファシズムと戦い苦しんだか。また、どんなに祖国ハンガリーとみずからの音楽や民謡、家族、平和を愛し守ったか。バルトークの直接の弟子であった著者が、偉大な彼の音楽と人生を優しく語りかける本」とある。
〜以下抜粋〜
トランシルヴァニアの農民たちを訪ね歩き、民謡を探し、調べ、発掘しました。
農民たちに歌ってもらうには、大変長い間、待たねばなりませんでした。信頼を得るのは、隠れた村々に行くのに、交通の手段に頼らず行くのと同じくらい大変なことでした。
素朴な人々の心に至るには、長い苦労に満ちた道のりが必要です。
トランシルバニアから、バルトークは母へ、手紙と、時に手書きの楽譜も入れて、何通も送っています。
「この歌を作曲した人は農夫です。小さい時に農民を抜け出して勉強をしていたとしたら、きっと優れた、尊敬すべき作品を書いたことでしょう」
「農民たちの間には平和があります。民族間の憎しみなどありません。憎しみは上流階級の人々の間のみ流行っている習慣です。」
そしてもう一つ、心の真底からの告白。
「私の生涯でいちばん幸せな日々とは村で農民たちと過ごす日々です・・・・・。」
〜抜粋終わり〜
6月12日に演奏するバルトークの6つのルーマニア舞曲は、バルトークの魂をふるわせ、幸せにした音楽の霊が宿って、今も、これからも永遠に私たちを感動させる名曲です。
6月12日、上野の旧奏楽堂でのリサイタルではバルトークの作品を取り上げます。
バルトークは貧しい農民たちが歌い継いできた中にこそ真の音楽があると信じて、ルーマニアやハンガリーの寒村へ出かけ、大変な苦労をして民謡を研究しました。そしてそこから得た感動から霊感を得て、独自の音楽を作り上げた素晴らしい芸術家でした。
少年の頃より、リストの再来と言われるほどの天才ピアニストでしたが、出世はもとより、社会や人々の非難をも顧みず、信念に従って生き抜いた善意と勇気の人だったバルトーク。世間は、迎合しない人に冷たいものです。辛い晩年だったようです。
バルトークは自分の民族文化だけを愛するのではなく、他民族の文化にも同じく深い理解、興味と尊敬を持って、アフリカで開かれた民族音楽の国際会議にも出席しています。「己の民族の誇りを持つことは、他民族も愛するということ」と戦争に反対だった彼は書いています。
今回のコンサートのテーマの一つはは、国民楽派です。
バルトーク、ファリャ、伊福部昭、アルベニス、プーランク。皆その時代の音楽家です。世界各国の色とりどりの宝石のような、美しい音楽!!
グローバリゼーションが盛んな今、これだか豊かな民族の違いを現在進行形で伝えられるでしょうか?どうか、民族の違いが紛争のタネでなく、豊かさの恩恵となるようにという願いを込めてこのプログラムを作りました。
今回取り上げる「6つのルーマニア舞曲」は色々な楽器に編曲されている大変人気のある曲です。たくさんの名演がありますが、私は今回「鳥の歌」のような、清らかな旋律を浮きたたせて演奏をします。素朴なさわやかさを感じていただけたら嬉しいです。
日本が世界の誇る伊福部昭先生の兄、伊福部勲さんは学業とともにチェロ、ギター演奏にも秀でており、名曲「アルハンブラの想い出」の日本初演者だそうです。
ご遺族からいただいた新聞記事には見出しで
「世界最上層の楽壇人と”批評”で交わる北大生 而も畜産科 伊福部勲君 隠れた超凡の天分」とあります。
(以下引用)
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「世界から見ればちっぽけな日本の北の端、札幌から「恋は魔術師」の作曲家近代音楽の頂点にあるスペインのデ・ファリャ〜に最近長唄「勧進帳」の楽譜を送って返事を待っている〜北大の一学生〜。
「南欧やフランス派の深い作家研究が一人の作曲家も持たない日本に、大きな作家を望み得るただ一つの方法ではないかと考える」
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今回演奏するのは、組曲の3番、「流し」。新内流しからインスピレーションを得たと言われる大変美しい曲だ。剽軽な軽快な掛け声から始まり、情味溢れるテーマ、中間部の活気あふれた掛け合い、最後は吉原の物悲しさが消え入るように終わります。
さて、伊福部勲さんのお手紙は、残念ながら届かなかったようです。当時ファリャはグラナダ市内で引っ越しを繰り返し、また招かれてイタリアへ演奏旅行をすることも多かった時期。もし、手紙が届き、勲さんがスペインに渡ったりしていたら!これがきっかけで音楽家になり、科学者の道を選ばなかったら若死することもなかったのかもしれない!心の広いファリャのこと、日本からの若者の声を歓迎して、興味深く日本音楽を研究していたかもしれない!空想は尽きません。
ところで、日本とファリャの繋がりがあったことを示す資料は、僅かに残っているのです。これはまたいつか書きたいと思します。
伊福部勲さん。時代を超えて故人を訪ねることができるなら、是非とも飛んでいきたいなあと、深く深く思います。

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