ファリャの生地カディスに住む良き友より、P Vayon氏の書いたファリャの生涯、作品、作風の変遷についてのわかりやすいエッセーをいただきました。2021年マヌエル・デ・ファリャ没後75周年記念イベントのために寄せられた文章のようです。
日本の皆様と共有したく、簡単に日本語に訳してみました。拙い訳ですが、お役に立てば何より嬉しく、こちらに掲載します。下のリンクをクリックしてご覧ください。
新譜ベリッシモが 昨日発売のレコード芸術誌6月号で特選盤に選ばれました!
鬱々としたコロナ禍に、私に夢を与えてくれた13人のイタリア作曲家を取り上げました。
選者の評論家の先生方に、CDの選曲について、明るい音色やレガート、歌心や豪快な弾きっぷりなど、沢山褒めていただき感激です。6/8上野旧奏楽堂、6/24釧路芸術館でも一部披露します。まだまだ未熟ですが、これからも一生懸命精進を重ねます。どうぞこれからも応援を賜りたくよろしくお願いいたします。
――重要文化財にも指定されている旧東京音楽学校奏楽堂での演奏です。西澤さんが楽しみにしていることはありますか。
滝廉太郎や山田耕作など、日本の西洋音楽を代表する方々が演奏していたホールです。私も幼い頃に両親に連れられて旧奏楽堂の演奏会に行き、そのロマンチックな雰囲気と綺麗なドレスで歌うソプラノ歌手にすっかり夢中になりました。まさか、私もここで演奏できるなんて。とっても幸せなことです。公園の緑の中で鳴らす音がとても柔らかく響くようで、18歳から住んだパリ留学時代の近所の8区モンソー公園を思い出します。後半のフランス音楽では皆さんに瀟洒な8区を彷徨っているような心地になって頂けたら嬉しいです。
――今後、西澤さんがさらに挑戦していきたいことはありますか。
11月15日には前述(※インタビューvol.2参照)のファリャ友の会の定例演奏会を開催します。特別ゲストの素敵なイタリアのバイオリニストをヴェネチアから迎えて、ファリャを軸に西洋音楽のおおもと=地中海諸国の音楽についてスリリングにトークつきでご紹介する予定です。皆さんの応援やご感想をいただきながら、私も楽しく深く学んでいきたいです。
ヴェネツィア音楽院のリハーサルの時の写真を少しご覧ください
――最後に、当日を楽しみにされている皆さんへ一言お願いします!
ヴェネチアをテーマにした曲のために、私が携帯で、ヴェネツィアで撮ってきたばかりの2つの動画をご紹介します。ご参考にご覧いただけたら嬉しいです。
Venezia 1 https://youtu.be/CQqSE08-bWw
Venezia 2 https://youtu.be/6rHLst84ukM
フランス、イタリア、スペインの明るく美しい音とパッションを、
音の振動が耳や肌に触れる快感を、シンプルに感じていただけたら。
目を閉じて、音の世界に心を預けてみませんか。
会場でお待ちしております!
こんにちは、安澄です!愛知県幸田町と武豊町での演奏会にはたくさんの素敵な方々にご来場いただき誠にありがとうございました。その写真をFacebookやInstagramだけでなく、こちらでもご紹介したいと思うのですが、ウェブサイトが見にくくなるかしら?と少し迷っています。
さて、武豊町公演では、「グラナダ県は山(スキー場もある本土で最高峰の約3500メートル)もあるが海もある。そこで取れた新鮮な魚介類もとっても美味」とお話しして、おすすめレストランをウェブサイトでアップすると予告しました!
それは中心から少し外れたところにある Bar FM です。住所:Avenida Juan Pablo II, 54, Granada, Spain
スペインの大俳優Juan Echanoveさんと、詩とピアノのリサイタルのツアーの途中、何度も通いました。日本の魚介類の美味しさとはまた違うけれど、これは美味い!と唸る味。ぜひお試しください。
−―普段はスペインを拠点に活動されている西澤さん。スペイン音楽の魅力も改めて教えていただけますか?
去年「日本・ファリャ友の会」を立ち上げました。ファリャはスペインの国民的作曲家です。スペインというとフラメンコ、ということで括られがちですが、本当はさらにさまざまな要素があります。ファリャ自身がスペインとは何かをずっと探っていたのです。地理上の国境線は一回忘れて、地中海という、アフリカ、ギリシャ、ローマ、南仏、スペインに囲まれた、豊穣な文化圏こそがルーツ。遠いフェニキア時代もローマ帝国も、イスラムの王達の時代も包括するロマンに胸がおどります。
ファリャはフランス、イタリア、スペインの錚々たる作曲家たちが作った「ラテン音楽家協会」の会員でした。西洋音楽の土台、所謂ラテンの国々で生まれて発展した教会音楽やバロック、ルネッサンス時期の遺産を再勉強して、新たな力強い音楽を作っていこうと、密に交流して切磋琢磨していました。
日本の文化にしても、江戸時代以前のことを知らないとよく分からないことってありますよね。そういうムーブメントのことを皆さんにもっと知っていただければと思っています。というわけで、今回のプログラムでもイタリア、スペイン、フランスの作品を取り上げています。
――選曲はどのように行っているのでしょうか?
その土地と関係のある作曲家を取り上げます。そこで生まれた・活躍した、ということから、映画つながり、文学作品の作者がヴェネチア狂だったとか、いろいろ。
歌の要素ではオペラ、民謡もの、踊りの要素ではフラメンコからバレエ、ピアノ技巧が華やかで楽しいもの、一つの音が消える様子を楽しむしんみりしたものなど、全体のバランスも考えて選びました。
私は18歳でパリに留学しました。桐朋女子音高には素晴らしい教育がありましたが、ランボーやヴェルレーヌの詩、カサドシュやフランソワなどフランスの名ピアニスト達の、自由で目眩のするようなトーンにずっと惹かれていた私は、「パリで生きたら詩人の友人がたくさんできて、いつか私も詩的な演奏に近づけるのではないか!私の人生、それ以外は何もいらない」と思い詰めていたのでした。
親の大反対もあったので、最初はカトリック修道女の運営する女子寮に入りました。
実際に行ったパリは案外、資本主義的な大都会で、期待していた詩的な破天荒な人に出会うこともなく、「身寄りもなく素性もわからないアジア人の女の子に、そんなに親切にしてくれる人はないだろう」とかなりおっかなびっくりの毎日でした。
とはいえ、クラシック音楽とピアノにかける夢を応援してくれる、見ず知らずのフランス人の人々(女性が多かった)の助けを思いかけず何度もいただき、夢に少しずつ近づきました。今思い返しても、見返りを求めないで応援をしてくれたパリの人々には感謝しても仕切れません。当時は必死だから何も思わなかったけれど、今思い返すとすごく充実した冒険人生を満喫していました。
先日、思い出の女子寮を尋ねました。感謝と懐かしさで涙が止まりませんでした。
最寄りの駅前広場。あんまり変わってません。
受付と共同サロンも。この中庭を通って、食堂に行きました。。。懐かしいなあ、、この辺りは全然変わっていない。。。
チケットサイト カンフェティとのインタビューを3回に分けてお送りします
―まずは、今回の意気込みをお願いします!
今回のチャレンジは、前半は6つの音楽で、ヴェネチアをリアルに感じて頂くこと。サン・マルコ広場から、ゴンドラの行き交う運河、カーニヴァルの仮面(マスク)、宮殿などをピアノの音で味わって頂きたい。後半のパリ編では、世紀末ベルエポックの時代にパリで活躍したエコール・ド・パリの音楽家、今回はフランス人とスペイン人作曲家を取り上げます。エコール・ド・パリは他ジャンルを包括してました。画家ではマティス、ピカソやダリ、モジリアーニ、藤田嗣治、佐伯祐三、シャガールなどがいます。彼らの交友関係を紐解きながらのトークコンサートですので、各作曲家を身近に感じて頂けると思います。現地での体験談やおすすめの歩き方もお話しながらの演奏になるので、楽しいコンサートになると思います。
明治・大正のロマンが薫る旧奏楽堂にお運びいただき、音楽の魔法の絨毯に乗って、皆さんとヴェネチアとパリへ旅行をする感じです。私もとてもわくわくしています!
――『ヴェネチアとパリに行こう!』というリサイタル名からもあるように、フランス、イタリアのピアノ曲が中心に演奏されますが、今回このテーマにした理由は何でしょうか。
ヴェネチアって実はとても音楽的な街なのです。『四季』で有名なヴィヴァルディが活躍していたことは知られていますが、『椿姫』など、名だたるオペラも皆ヴェネチアで初演されています。ヴェネチアの空気は、澄んだ歌声のように軽く伸びやか。明快なイタリアンサウンドを是非楽しんで欲しいです。
パリ編は、パリの最も華やかだった時代「ベルエポック」にパリで開花していった作曲家たちを取り上げます。最高に華やかな時代ですが、二つの世界大戦、世界恐慌もあって、目に見えぬ不安と恐怖、負の感情が芸術の養分となっていました。それを跳ね除ける、気力とエスプリも魅力的です。個性的で人間臭い作曲家たちの、横のつながりにも興味を持って頂きたいと思いました。
「16世紀の半ばは、実は、天動説から地動説、キリスト教世界の分裂、新大陸からの金銀の流入にともなる経済の変動など、それまで人々が予想もしていなかった大変化が相次いで起きた時代である。当然、人々は不安に陥り、新しい指針を求める。そのため、16世紀後半のスペイン文学は、教訓文学、宗教文学、神秘主義の文学で埋まっていると言ってもいい」。
「鋭敏な感覚を持ちながら価値が逆転するような世界に生きることを余儀なくされれば、誰しも狂気ということを頭に浮かべざるを得ないのではなかろうか。世界を見る確固たる足場が得られないまま、捕らえがたく変化する世界に対して本心を吐露しようとするとき、狂気の時を併せ持つ狂人こそ、自己を仮託すべき理想的な人物にもなりうるのである」。
ケベード著「地獄の夢」で悪魔が「人間を滑稽にする3つのものがある。第一は貴族の家柄、第二は体面、第三は勇気だ」と言っているように、覚めた目には「多くの人たちが尊重している価値も単に笑うべきものに過ぎないのである」。
アフターコロナ、地球温暖化、急速なIT技術の浸透、戦争の不安の今、我々は現代のバロック時代を生きているのだろうか。
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澁澤龍彦文学館 「バロックの箱」より 解説 桑名一博氏の文章より一部引用