ラヴェルのこと

来シーズンの演奏会ではスペインバスク地方に生まれた作曲家グリーディ、フランスバスク地方に生まれた作曲家ラヴェルの曲も聞いていただく予定です。ラヴェルはあの有名な「亡き王女のためのパヴァーヌ」を演奏します。

有名な曲をきちんと演奏するのは難しいものです。耳の先入観を追放するのは大変です。その上この曲は特に、「おしゃれで機知に富んだフランス人ラヴェル」というコマーシャルマーケティングの印象が強すぎませんか?カリカチュア感が。。。

ずっと避けていたこの曲をなぜ聞いて欲しいと思ったか。

彼の生地サンジャンドリューズ(スペインと国境の街)を訪れて、「ラヴェルの音楽の率直で自然な美しさ!」に閃いたのです。そしてスペイン側バスク出身のグリーディの作品と合わせて聞いてもらうことによって、二人のバスク人に共通する空気感が、より確かな答えとなると思うのです。

亡き王女のためのパヴァーヌ。題名にはほとんど意味がない、音の響きでタイトルをつけたそうです。センスが良いなあ。で、ご存知でしたか?太陽王ルイ14世が花嫁となるスペイン王女を待ち、豪華な結婚式を挙げたのは、他でもないここ、サンジャンドリューズの美しい教会であったこと。

教会内部はまるで木製の大きな船のよう。不思議な、この世のものとは思えない美しさとあたたかさで満ちていました。大西洋に面していて、街のどこにいても、なだらかな緑の丘の上にいても、どんな時も湿気と匂いで、海の存在がある街であったこと。若々しい歌、中世やスペインへの憧れ。そんな雰囲気を感じる演奏をしたいと思います。

 

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